鼻中隔湾曲症とは
鼻の穴を左右に隔てている壁を鼻中隔(びちゅうかく)といいます。この鼻中隔が強く曲がって(湾曲して)いるせいで、鼻づまりやいびき、嗅覚障害といった症状が慢性的に現れる病気が鼻中隔湾曲症です。
ただし、鼻中隔の湾曲自体はそれほど珍しいことではなく、大なり小なりほとんどの人に見られるものです。したがって、鼻中隔が湾曲していても症状を感じることがなければ、鼻中隔湾曲症と診断されることはありません。
しかし、風邪やアレルギー性鼻炎のような病気ではないのにしつこい鼻づまりに悩まされているという方は、鼻中隔湾曲症の可能性も考えて、一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
鼻中隔湾曲症の原因
鼻中隔は軟骨と骨で構成されています。思春期までの成長過程で身体とともに頭も大きくなっていくにしたがって、この軟骨と骨も成長していきます。しかし、軟骨の成長スピードが他の骨よりも早いせいで、まだ成長の追いつかない他の骨と位置を合わせるために軟骨が湾曲していくことがあります。これが鼻中隔の湾曲が生じる典型的な原因です。
その他に、鼻に打撲や骨折といった外傷を負ったことが原因となって鼻中隔が湾曲することもあります。
鼻中隔湾曲症の症状
鼻中隔湾曲症の典型的な症状は鼻づまりです。鼻中隔が湾曲している側の鼻腔が狭まることによって、慢性的に発生します。
さらに、鼻腔の狭まりやそれにともなう鼻づまりから波及する形で、健康状態に以下のような弊害が現れる場合があります。
- 鼻ではなく口で呼吸をするようになる
- いびきをかくようになったり、しっかりと眠れず睡眠不足になる
- 頻繁に頭痛を覚える
- においを正常に感じ取れなくなる(嗅覚障害)
- 狭まった鼻腔内の粘膜が過敏になって、鼻血(鼻出血)が出やすくなる
また、慢性的な鼻づまりによって鼻の粘膜が炎症を起こしやすい状態が続くことから、しばしば副鼻腔炎などを併発することもあります。
嗅覚障害とは
嗅覚障害とは、何らかの原因でにおいを正常に感じ取ることができなくなることをいいます。その原因はさまざまですが、鼻中隔湾曲症をはじめ、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎といった鼻の病気においては、鼻づまりなどによって鼻腔内のにおいを感じる部分までにおいを含んだ空気が届かなくなることが原因である場合がほとんどです。
また、においが感じられないと、同時に味も感じにくくなることから、味覚障害を併発するケースも少なくありません。治療は薬剤によるものの他、鼻の病気が原因の場合にはその病気を治療するための手術を行うこともあります。
鼻出血が起きた時の対処法
鼻中隔湾曲症をはじめとする鼻の病気で鼻出血が起きた際には、以下のように対処することで出血が止まる可能性があります。
- 鼻の穴にティッシュなどを詰める前に、指で小鼻を両側から挟んで強く圧迫します。
- 小鼻を圧迫したまま椅子に座って前かがみになり、下を向いた状態で5~10分安静にします。
- その間、鼻から喉(のど)に流れた血は飲み込まずにティッシュでぬぐうなどして外に出します。
- 5~10分経過後も血が止まらなければ、鼻の穴にティッシュなどを詰めた上で1~3を繰り返します。
- 念のため、その後はすみやかに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。なお、受診するまでは入浴、アルコールや刺激物の摂取、喫煙、鼻を強くかむことなどを避けて安静に過ごし、受診後は医師の指示にしたがうことが大切です。
鼻中隔湾曲症の治療内容について
鼻中隔湾曲症は、アレルギー反応や細菌感染などではなく鼻中隔の湾曲という物理的な原因を持つ病気なので、治療には手術が必要になります。
なお、併発している病気の有無や種類、症状の程度などに応じて、以下の2種類の手術を同時に行う場合もあります。
※当院では、下記手術は実施しておりません。手術が必要な患者様には、専門の医療機関をご紹介させていただきます。
鼻中隔湾曲症矯正手術
鼻中隔湾曲症を治療するための基本となる手術です。鼻中隔の湾曲した部分から骨を切除することで鼻の通りをスムーズにします。
粘膜下下鼻甲介骨(ねんまくかかびこうかいこつ)切除術
アレルギー性鼻炎のような鼻の炎症を併発している場合、鼻中隔湾曲症矯正手術と同時に行う場合がある手術です。鼻の内部にある下鼻甲介と呼ばれる突起が鼻づまりを助長している場合、その骨を切除することで鼻の通りをスムーズにします。
鼻中隔湾曲症に関するQ&A
鼻中隔湾曲症とはどのような病気ですか?
鼻の穴を左右に隔てている鼻中隔が強く湾曲しているせいで、鼻づまりや口呼吸、いびき、頭痛、嗅覚障害、鼻出血といった症状が慢性的に現れる病気です。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎のような類似症状が発生する病気を併発した場合、お互いの症状を助長し合って、より重症化する場合があります。
鼻中隔が曲がる原因は何ですか?
思春期までの成長過程で身体とともに頭も大きくなっていくにしたがって、鼻中隔を構成する軟骨と骨も成長していきます。しかし、軟骨の成長スピードが他の骨よりも早いせいで、まだ成長の追いつかない他の骨と位置を合わせるために軟骨が湾曲していくことがあります。これが鼻中隔の湾曲が生じる典型的な原因です。
ただし、鼻中隔の湾曲自体は大なり小なりほとんどの人に見られるものなので、鼻中隔が湾曲していても症状を感じることがなければ、鼻中隔湾曲症と診断されることはありません。
どのような場合に鼻中隔湾曲症の治療が必要になりますか?
鼻づまりや口呼吸、いびき、頭痛、嗅覚障害、鼻出血といった症状の原因が鼻中隔の湾曲にある場合に治療が必要になります。
鼻中隔湾曲症にはどのような治療方法がありますか?
鼻中隔湾曲症は鼻中隔の湾曲という物理的な原因を持つ病気なので、治療には手術が必要になります。鼻中隔の湾曲した部分から骨を切除する鼻中隔湾曲症矯正手術を基本として行い、アレルギー性鼻炎のような鼻の炎症を併発している場合は下鼻甲介と呼ばれる突起の骨を切除する粘膜下下鼻甲介骨切除術も同時に行う場合があります。
手術で鼻の骨を切除すると鼻が弱くなりませんか?
鼻中隔湾曲症の症状改善に必要な最低限の部分だけしか切除しないので、手術後に鼻が弱くなるような心配はありません。
いびきは鼻中隔湾曲症の手術で治りますか?
原因が鼻中隔湾曲症であれば、手術で鼻の通りをスムーズにすることによって、ほとんどの場合いびきが軽減されます。
17~18歳まで鼻中隔湾曲症の手術を待つよう医師に言われたのですが、なぜでしょうか?
鼻中隔は思春期が終わる頃まで成長を続けるので、それよりも前に手術を受けると、その後の鼻中隔の成長に支障をきたす場合があるからです。思春期を過ぎて以降であれば、手術を受けても問題はありません。